バラが西洋の花だって言うのは、無知な人間だ
今の園芸種の成り立ちからもしっかり言えます東洋のものでもありますって。
様々な園芸植物がありますが、日本原産の植物が海外で人気となり、魅力を引き出す交配がなされ、それが日本に戻ってきているものがかなりあります。
最近、日当たりの良くない庭(シェードガーデンとかっこよく呼んでいるが、本来の意味はちょっと違うらしい)で人気のホスタは、もともと日本では、ギボウシやウルイと呼ばれ、東北地方などでは春、山菜として食べられていました。また、アジサイにしても、日本原産で、江戸時代の武士の世の中では人気がなかったものが、その美しさをヨーロッパの人々に見出され、日本に凱旋帰国したようなものです。
他にもまだまだありますが、バラもそのような植物の一種です。
特に現代のバラには日本原産のバラの血(?)が流れています。そんな原種たちをまず紹介してみます。
1.ノイバラ
オールドローズの一系統、ハイブリッド・ムルティフローラはノイバラをもとに交配されたもので、昔から植えられている「キング」がその中のひとつです。
また、モダンローズのポリアンサ系統はノイバラとオールドローズのチャイナ系の交雑等が由来ですし、さらに、ポリアンサ系統はフロリバンダへつながっていきます。
現在の市販されている中輪房咲きの系統の多くは、祖先に、日本の野生種ノイバラの血を引くのです。
2.テリハノイバラ
モダンローズの一系統、ハイブリット・ウィクラナはテリハノイバラをもとに交雑された系統です。この系統で有名なバラといえば、家の壁面いっぱいに白い花で覆ったりできる「アルベリック・バルビエ」があります。
3.ハマナス
北海道出身の僕にはなじみ深い花ですが、北海道の人でも、ハマナスがバラの原種とは知らない人がたくさんいます。
野生種なのに、園芸種ばりの完成度の高い花を咲かせます。香りもとても良いですね。そんなハマナスですが、モダンローズの系統のハイブリッド・コルデシーにつながっています。さらに、ハイブリッド・ルゴーサはハマナスを交配親にした系統です。
また、日本だけでなく、中国大陸などの東洋出身の原種を交配したものも現代のバラの特性に大きく寄与しており、四季咲き性をもたらしたり、日本人が好みの花形「剣弁高芯咲き」も明から清の時代には完成されていたようです。そして、ティーの香りも中国のバラ、ロサ・ギガンテアからもたらされました。
このように、もともとは、東洋の血を引いているバラは、決して西洋の花だけではないのです。正しくは北半球の花なのです。
最近、京阪園芸F&Gローズで「和ばら」として打ち出し、日本庭園での利用を提案していますが、他の多くの種類の中にも、今までの日本庭園に彩をさりげなく添えられる品種があります。
先入観をなくしてみれば、盆栽などで育てられている「さつき」の中には、バラもちょっと地味に見えるくらいのすごく派手な花もありますし、「芍薬」や「牡丹」も華やかさでは、バラに一歩も引けをとらない。椿だって、「えっ」って思うような品種もあります。
だから、バラを西洋のものとは思わず、アジサイのように凱旋帰国したものと捕らえて、いろいろなシーンで使っていただきたいと思っています。
きっと、日本の庭にも似合うはずです。
日本の原種の血が入っている花がたくさんあるのですから。